ドヤ街の中であえて合同会社をやるというコトラボ岡部さんの選択。そして、設計事務所ではなく、あえて、投資家から資金を募って、市場の構造の転換までを目指すツクルバ中村さん。二人とも、資本や仕組みに対する捉え方に特徴があるなと思っているのですが、これからの思考はどこに向かっているんですか?

資本の原理の中でどれだけ社会に対してアクションができるかという挑戦
中村
僕たちの場合でいうと、資本の原理でどれだけ社会に対してアクションができるかっていうのをやってみたかったんですよね。事業がうまく回れば回るほど社会問題は解決されていくということを、まっとうに儲けることを通じてやりたかったんですよ。
別にそれって株式会社じゃなくてもできる。それこそルーム・トゥー・リードのジョン・ウッドさんも言ってる。もちろん、NPOでも稼いでもいい。その通りだなと思いながらもやっぱり資金の調達の仕方とかも考えると株式会社が良かった。
株をちゃんと渡すことによって資金調達もできるっていうベンチャー的な戦い方も想定して、株式会社に決めました。
ルーム・トゥー・リード
マイクロソフトの幹部社員だったジョン・ウッドにより2000年に創設されたNGO。“子どもの教育が世界を変える”という信念のもと、すべての子どもが初等教育の間に読み書きと読書習慣を身につけることを目指す。

入場券としての資本。資本と人間を切り離す必要はない
中村
最近はどんどん空間じゃないほうに自分の興味がいっていて。今一番あるのってコミュニティ通貨とかなんですよね。
岡部
コミュニティ通貨ですか!
中村
仮想通貨の盛り上がりもすごいですが、そうじゃない側のアプローチですね。
中村
相互扶助のコミュニティをいかに作れるかというところに関心があって。しかもさっきのco-baの文脈じゃないですけど、どうしたら自己組織化されたコミュニティの中で流通するような通貨を生み出していけるのか考えていますね。
そういうような貨幣経済じゃないオルタナティブな仕組みがあると、ひょっとすると、まちづくりにも転用できるかもしれない。そういうことをもやもやと考えているんですけど。
岡部
おもしろいですね。今から20年くらい前に地域通貨の話って流行ったじゃないですか。それとは、別の発想なんですよね。
中村
例えばco-baでも置きていることだと、お金を払って使ってくれているいる会員さんたちが勝手に「ここ、ごみ捨てるところじゃないから、俺、綺麗にしといたわ」とか言って。なんかいわゆる「お客さん」じゃないんですよね。
同じコミュニティの構成員というか。同じ方向を向いているから、起きえることってありますよね。お金を払って、しかも、コミュニティにコミットしてくれている。そこでもらう会員費は体温があるお金だなって思うんです。
岡部
地域通貨に関心があるっていうのすごく腑に落ちますよね、その話を聞くと。
中村
仮想通貨には、法定通貨の流動性を高めて滑らかにした利点もあると思っています。地域通貨という概念の進化系も、今の時代だからこそある気がしていて。テクノロジー化された地域通貨、コミュニティ通貨みたいなものを考えていきたいなと思ったりもしていますね。
岡部
僕も「交換」をもう一回真剣に考えようかなと思って。交換って物と物だけじゃなくていいと思うんです。行為だったり、市場では価値のないものであってもいい。気持ちの交換だったり、コミュニケーションそのものだったり、物語を交換したり。
中村
誰でも使えるプラットホームをつくって、僕らも自ら使おうと思っています。
岡部
いいですね。
中村
co-baもその一部に入ればいいし、ひょっとしたら、コミュニティ・アセットにも使えるかもしれない。
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