地域のアセットが地域の課題を解決する

 

ツクルバ中村真広×コトラボ岡部友彦(3)

地域のアセットが地域の課題を解決する

ツクルバ中村さんから自己組織化というキーワードが飛び出す一方で、コトラボ岡部さんは日本三大ドヤ街とも呼ばれる寿町での自身の経験を語りはじめます。「チャリティをやる」という選択はできなかったと語るコトラボ岡部さんが見た景色はどのようなものだったのでしょうか?

東大の建築を出て、ドヤ街に住み着いた変なやつ

岡部

僕が寿に関わりはじめたのは2004年くらいから。僕も建築出身なんですけど、大学院で都市論をやってる研究室に所属していて、建物を設計するよりも都市や地域の活動を俯瞰して見ていくことに関心を持つようになってしまったんですね。そんな中で横浜の寿町っていう日雇い労働者の町に出会って。

当時、寿町って聞くと「危ない」「怖い」というイメージで見られていたんです。でも、実際行ってみるとそんなことはないんです。下町の人情味のあるおじさんが多くて。困っている人がいると助けてくれたり、迷っている旅行者なんかを案内してくれたり。
そんな中でイメージのギャップを埋めるために何かできないかって考えていた時に、空き部屋に注目したんですね。簡易宿泊所、日雇い労働者向けの宿がずいぶんと空いてしまっていた。決してアクセスが悪いわけではないのに、空き部屋が多い。

そこの空き家を何とかしたいっていう建物所有者からの相談があって、そこから、まち全体の空き部屋をつなぎ合わせてひとつの宿のイメージをつくって、まちの印象も変えつつ事業をつくっていこうとしたんですね。それが、横浜ホステルビレッジを始めたきっかけだったんでした。

横浜ホステルビレッジ

中村

道なき道ですよね。岡部さんの周りでもなかなか共感する人は少なかった?

岡部

もちろん。絶対やめろとか、お前は間違っているとか。

岡部友彦

1977年 神奈川県生まれ。東京大学大学院建築学修了。コトラボ合同会社代表。2004年から横浜寿町を拠点にヨコハマホステルヴィレッジなど地域活性化プロジェクトを行っている。”モノ”づくりではなく、”コト”づくりからまちづくりに取り組むかたちで、街のイメージチェンジを行うのとともに、街の資源を活用し、新たな産業を創る取り組みを行っている。

貧困の中にある彩り

中村

もうちょっと寿について、聞かせてもらってもいいですか?

岡部

なんかね、飽きないんですよ。毎日いろいろな物事起こりますからね。いいことも悪いこともありますからね、面白いですよ。

当時、寿町って聞くと「危ない」「怖い」というイメージで見られていたんですよね。ただし、実際行ってみるとそんなことはないんですよ。下町のおじさんが多くて。なんか人情味がある。困っている人がいると、迷っている旅行者なんかを案内してくれたり。

僕はホステルのロビーを商店街の八百屋さんのような感じにしたいなと思って。誰でもふっと入ってこられちゃう感じにしているんです。

うちのスタッフ、特に若い女性なんかがいるともうみんなメロメロになっちゃって、いろいろなお菓子とか差し入れてくれたりする。生活保護もらっているおじさん達の中から支給日になるとハーゲンダッツとか差し入れしてくれる人がいたり。

たまに酔っ払いなんかも来ちゃったり、おっちゃんたちがコーヒー飲みに来たり。さらに、金髪のお姉さんがチェックインしに来たり。

そういう場ってなかなかないじゃないですか。でも商店街にはかつてあったと思うんですよね。ごちゃ混ぜで偶発的な出会いって。そういういろんなコトを跨いだ緩やかなつながりがあればと思うんですよね。ご近所ともつながりつつ仕事関係のお客さんが来たりとか、そしてその人たちが偶然そこでおもしろいねって意気投合しちゃったりとか。

地域のアセットを使って地域の課題を解決する-1

寿町で単純にチャリティをやるという選択は僕にはできなかった

岡部

そういう多様な状況下で、僕が提供できるものは何なのかなって思ったりもしていますね。

こういう場所って、ボランティアで入ると第一義的におじさんたちをケアしなければって感じになりやすくて。そうすると過度な思い入れをして疲れてしまったり、資金的に非常に不安定になってしまいやすいじゃないですか。それは僕にはできないなと思って。だからこそメインのスキームはホステルという軸で作り、そこに関わる若い人達と興味があれば関われるというくらいのゆるい関係性を意識しています。

さっきの、若い人たちに差し入れをしてくれるおっちゃんたちの中には、そうやって若い人たちと話すと元気になるって人が現れるんですよ。そういう偶然性が大事だと思うんですよね。

関わっていく上での継続性をどう考えるか?

―岡部さん、単純なケアではありたくないっていうのもどこかありますよね。

岡部

継続していかないといけないんじゃないかなと。思い出づくりや一定期間だけで終わっちゃう何かだと、また元に戻っちゃうので。持続性が重要だと。持続をさせるためにはなにか一つの軸がないとだめだと思っていて。先ほどの人の時間軸と街の時間軸の話に繋がりますね。

岡部

日韓ワールドカップの2002年の頃に山谷とか、旅行者向けにドヤを改修してホステルにするっていうのがけっこうあったんですよね。それをここでもやってみよう、と。ただ、1軒だけでやるのはまちの全体の印象を変えていくことにつながらないので、地域に点在してる空き部屋の中で関心を持ってもらえるオーナーさんの建物をつなぎ合わせて、一つの宿のイメージをつくってみることから始めました。

今60部屋くらいを運営していて。町の中に一つロビーをつくって、まずそこでチェックインをしてそこからAとBとCみたいに各建物にご案内していく感じで運営しています。

中村

ようやく時代が追い付いてきた。

岡部

そう、そうそう。

風呂トイレ共有の木造賃貸ですら地域のアセットに変わる

―ビジネス的には採算も考えていると思うのですが、そのバランスってどう取っているんですか?

岡部

たとえば、木造賃貸アパートでお風呂もトイレもなかったり共有だったりするとなかなか借り手がつかないし、そもそも市場に出回らない。ニーズもそれほどなくなってきている。

そういうところを、逆にうまく活用することを通じて、新しい価値を作れないかと考えています。例えば、地域のおじさんたち、寿のおじさんたちが結果として、元気になっていくような使い方ができないかなと考えるようになったんですね。良く言えば地域のエコシステムに組み込めないかなってことをずっとやろうとしてきています。

Hanare Project
木造賃貸アパートをリノベーションしたHanare Project

岡部

生活保護の方たちが元気になっていくような居住空間を考えていたんです。寿の家賃って結構高かいんですよ。一方で、民間のアパートだと木造賃貸でおんなじ金額で探すと15平米くらいあるわけです。広さだけ考えても元の3、4倍くらい。そこを地元のデザイナーやアーティストに協力してもらって、リノベーションした状態のものをおじさんたちに提供するってことをはじめました。

ただし、そこに入居するにはアルバイトなり、仕事をしないとといけないって条件つけて。

良いホテルに泊まると気持ちが上がるってことありますよね。それと同じように良い住環境が、結果としてその人の気持ちやモチベーションに影響を与えるってことがあるのではないかと思って。

生活保護の人たちって働くと、その分だけ支給額が減るんですよね。5万円もらうと5万円減ってしまう。働いても働かなくてももらえるんで、職場で嫌なことがあって辞めてしまったり、同じ境遇の人達との環境に浸かると働く意欲無くなっちゃう人も出てくる。この負のスパイラルを変えられたら良いなって思ったんですよ。

おじさんたちが若い人たちと交流するのが楽しいってことはホステルでわかっていたので、若者と関われるコミュニティの場を働く場として設計しました。そうすると結構続くんですよね。お金のためだけにやっていると、上司とトラブルがあっただけでもう辞めてやるよってなってしまう。

中村

なるほど。それは、今まさにトピックとなっている社会課題ですね。働かなくても良い世界になると人間は働くのかって。

岡部

まさにそうだと思うんですよ。これってお金持ちの考え方に似ているなって思ったんです。労働ではない。関心のあることはやるけど、ないことはやらなくていい。若い人たちとのコミュニティに参加して働いた結果、お金がもらえる。
もしかすると、人は自由を手にした時こそ試される。そういう意味ですごく学ぶことがあります。

中村

面白いですね。人間の根源的なやつですよ。

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Tetsuo Kato

アジア及び日本におけるベンチャー企業および非営利組織の事業開発に携わり、計27社の事業開発及び変革を支援。2011年、東日本大震災を契機にWorld In Asiaを立ち上げ、以降、東北、日本、アジアでの「社会的投資」を手がけてきた。AERA「アジアで勝つ日本人100人」に選定。著書に「辺境から世界を変える」(ダイヤモンド社 2011年)

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