「自己組織化」を促すビジネスデザイン

 

ツクルバ中村真広×コトラボ岡部友彦(2)

「自己組織化」を促すビジネスデザイン

対話は、それぞれの取り組みに回帰します。まずは、ツクルバの中村さんから。ツクルバは急成長を遂げ、ベンチャー企業の雄として注目されている企業ですが、そのツクルバはビジネスと社会の境界線をどのように踏み越えようとしているのでしょうか?

co-ba
co-ba shibuya

中村

創業して最初に始めたのがco-baというコーワーキングスペースでした。2011年12月にco-ba渋谷をオープンし、それから全国展開をして、今でようやく18か所ですね。

co-baでは各地のオーナーさんと一緒に場づくりをしていくっていうことをやってきたんですね。そのネットワークが価値を持ち始めています。各地のco-baを使っていた利用者が東京に出ても使える場所がある。それが特に地方のコーワーキングスペースの利用者にありがたがられていますね。

岡部

都会に出てきたときに、もう居場所があるわけですね。

中村真広

株式会社ツクルバ代表取締役CCO(チーフクリエイティブオフィサー)。
1984年 千葉県生まれ。
東京工業大学大学院建築学専攻修了。200年株式会社コスモスイニシア入社。その後、ミュージアムデザイン業界を経て、2011年株式会社ツクルバを村上と共同創業。実空間・情報空間を横断した事業プロデュースを通じて、枠組みのデザインを行っている。

コーワーキングスペース

フリーランサーやベンチャー企業向けの新たなオフィス空間として重要な選択肢になりつつある。事務所スペースの提供のみならず、ゆるやかに価値観を共有する参加者同士の交流や懇親など、コミュニケーションへの配慮が行われる場合が多い。

ローカライズとネットワークの相乗効果

中村

東京の人が海士町に行くとか一部はありますよね。ただ、絶対数は多くない。逆は結構あるわけですよね。地方から都市へ。

だから、ローカライズとネットワークっていうのをco-baのキーコンセプトにしていますね。各地のco-baは「ご当地」のデザイナーと一緒につくっていってもらうんですよ。

ツクルバはもう東京だったら直接やりますくらいでしかないんですよね。多くのco-baはもう各地の人が勝手にco-baのデザイン言語を読み替えてつくっていますね。

こういう風にco-baを解釈してデザインしてくれたんだなとか、各地のデザインには読み替えがある。だから、こちらにも発見があるんですよね。それも自分たちの楽しみになってきています。

海士町

島根県隠岐郡の離島。特産品の開発から教育改革までまちぐるみで取り組み、多大な成果を上げる。10年間で400人の移住者を受け入れ、移住者と共に町の再生に取り組んでいることにも特徴がある。地域再生の最成功事例の一つとして常に注目される。

自己組織化を促すビジネスデザイン-1

岡部

ネットワーキングされた各地のco-baに共通の何かっていうのはあるんですか。名前はもちろん共通だと思うんですけど。守るべき共通の何かは?

中村

六ヶ条はつくっていますね。

<co-ba六ヶ条>
  1. 「チャレンジを応援する」マインドを共有していること
  2. 運営者の属性にローカライズされていること
  3. デザインが地産地消であること
  4. ユーザーの相互乗り入れが可能であること
  5. 民間主導型まちづくりの拠点になること
  6. co-ba NETWORKに能動的に参加すること

「お客さん」にしないという選択ももっとあっていい

岡部

お金の話としては、どうなっているんですか?

中村

ネットワーク契約として月額でもらっていて、それは固定の金額にしています。売上に対して払ってとかではなく、完全に固定ですね。しかも、ぶっちゃけて言うとそんな大層な額じゃないんですよ。

中村

都心ならともかく、それこそ東北の気仙沼とかになってくるとNPOが現地で支援をしたいがために始めているわけです。そうすると、物件全体の家賃が数万円なんですよ。結構いい場所にあるんですけど、コーワーキングスペースの開設者が家賃として支払っているのが数万円。そんな中で、加盟料を東京価格で払っていたらやっていけないじゃないですか。それはちょっとね。だから、地方主体のNPOやまちづくり団体の場合は、一緒にco-baという現象をつくっていく仲間として適切な金額を良しとしています。

岡部

一緒につくっていった感じですね。

中村

はい。「お客さん」にしたいわけじゃないんで。

収益は結果でしかなかった

―ビジネス的には採算も考えていると思うのですが、そのバランスってどう取っているんですか?

中村

固定で毎月いただく代わりに、決済システムや会員管理のオリジナルデータベースの仕組みを提供していますね。システム利用料だと思うとそんなに高くない。

岡部

いいですよね。必要だけれど、どうしても、費用がかかるものを共有して、全体の費用を抑えているんですかね。

中村

そうですね。co-baメンバーズっていう簡単なユーザーデータベース機能をつくっていて。例えば、地方のco-baのユーザーさんがちょっと東京のグラフィックの人に頼みたいんだよねとかあると検索して直発注ができたり。

だから、システム利用料やネットワークの連帯がバリューですね。

中村

co-ba事業に関してはネットワークを広げることをメインでやってきましたが、ようやく最近収益化も見込める状況になってきたかなって感じです。

地元の有力企業の稼げる地域貢献としてのコーワーキングスペースを開設するという流れもはじまってきています。地元の有力企業が次のイノベーションの種として、その地域の面白い人と接点を持ちたいというニーズは結構あるんですよね。

岡部

やっぱり地域の人の流れを意識されていますよね。生活も含めて。

自己組織化するco-baネットワーク

中村

開設したい人から「やりたいです!」と連絡をいただき「じゃあまずは渋谷に来てください!」って言って、話して。Co-baの考え方と相性が良さそうなら「やってください」って。僕らがあれやこれや指図するのではなくて、自己組織的にco-baネットワークが生み出されていくのが僕はすごい楽しくて。まったくこっちから営業かけてないんですよね。

やってくださいって言った後に僕らが盛り上げることはできないので。

自己組織化(self-organization)

雪の結晶の成長など、物質自体が自律的に秩序を持つ構造を作り出すプロセス。組織開発の分野にも転用され、脱中心的な組織の描写としても使われる。

自己組織化を促すビジネスデザイン-2

中村

そうですね。それだけ自分自身で声を上げて人を巻き込める人にオーナーやってもらっていますね。

岡部

そういう人が見つかるっていうのがすごいですよね。

中村

逆に僕らを頼りたがる相談者の方もいるんですよ。設計もやってもらって、なんなら運営も外注できませんか?とか。それは、一切断っていますね。目指しているのは、そういうことじゃないので。

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Tetsuo Kato

アジア及び日本におけるベンチャー企業および非営利組織の事業開発に携わり、計27社の事業開発及び変革を支援。2011年、東日本大震災を契機にWorld In Asiaを立ち上げ、以降、東北、日本、アジアでの「社会的投資」を手がけてきた。AERA「アジアで勝つ日本人100人」に選定。著書に「辺境から世界を変える」(ダイヤモンド社 2011年)

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