場を軸に社会課題を解決する「活動家」でありたかった

 

ツクルバ中村真広×コトラボ岡部友彦(1)

空間を軸に社会課題を解決する-1

岡部さんは東大を出て、あえてドヤ街でコトラボを立ち上げた。中村さんのツクルバも純粋なビジネスベンチャーでももちろん良かった。お二人には、「場」の社会的な価値を信じている感じが共通している。そのルーツはいったい何からくるんですか?

場を軸に社会課題を解決する「活動家」でありたかった

空間を軸に社会課題を解決する-2

中村

僕の原点の片側はコモングラウンドの創設者のロザンヌ・ハガティの物語なんですよね。「チェンジメーカー」という言葉が出てきた頃がちょうど大学院時代でした。

そのころ僕はビジネスとはまったく無縁な建築学生で。ロザンヌ・ハガティさんに新しい空間的なアクションの可能性が見えてしまって。

今って「社会起業家」って言わなくても社会起業家的にベンチャー始めている人結構多いなって思っています。僕らの世代では社会起業家ってよい意味で使われなくなってきている言葉かもしれません。

中村真広

株式会社ツクルバ代表取締役CCO(チーフクリエイティブオフィサー)。
1984年 千葉県生まれ。
東京工業大学大学院建築学専攻修了。200年株式会社コスモスイニシア入社。その後、ミュージアムデザイン業界を経て、2011年株式会社ツクルバを村上と共同創業。実空間・情報空間を横断した事業プロデュースを通じて、枠組みのデザインを行っている。

NIKEとロザンヌ・ハガティの取り組みが「同じ」に見えた

中村

もう片側で、学生時代にNIKEの宮下公園の改修プロジェクトに関わったことがけっこう大きかったんですね。ロザンヌ・ハガティだとか言っていたら、NIKEの人が大学の研究室にやってきたんです。

資本主義の時代だし、もちろん、NIKEも資本主義のプレイヤーだけれど、哲学がある。宮下公園を「NIKE Park」にしようかなとか言いながらも結局、「宮下公園」って当初の名前で貫いた。社会問題としても話題になりましたけど、結果、スケートボーダーが増えていたりする。渋谷の街が変わった。都市の構成が変わったんですよね。

ロザンヌ・ハガティ

コモン・グラウンド・コミュニティ創設者
20年以上にわたり、ホームレスの解消およびコミュニティ強化のための革新的な手法を開発・実践してきたことで、世界的に評価されている。

そこから、資本主義をうまく使って都市変えていくということに面白さを見出しはじめました。ロザンヌ・ハガティさんの取り組みとNIKEの宮下公園の改修って一件、真逆に見えると思うんですけど、実際にプロジェクトをやってみると、自分にとっては思ったよりも近しいものだった。

都市の生態系であったり、場所の変容という建築設計の前段階から関われるような人になりたくて。

岡部さんがまさにやられていることって、空間を事業化してそれで社会課題と向き合っている。まさにロザンヌ・ハガティのような。昔の学生時代を思い出したような気持ちです。

岡部

うれしいですね。まさかここでロザンヌの名前が出てくるとは思わなかった。

僕もロザンヌからはすごく影響を受けました。寿町にも何度か来てくれています。地域の問題に対して、ただチャリティでやるのではなく、ちゃんと経済的なロジックを作ってホテルを購入したり、路上生活者の仕事を作ったり。それによって地域の治安が良くなり社会コストも下げられる。

中村

これまでつながっていなかったすべてをつなぎ合わせる。それがすごく面白かった。

岡部友彦

1977年 神奈川県生まれ。東京大学大学院建築学修了。コトラボ合同会社代表。2004年から横浜寿町を拠点にヨコハマホステルヴィレッジなど地域活性化プロジェクトを行っている。”モノ”づくりではなく、”コト”づくりからまちづくりに取り組むかたちで、街のイメージチェンジを行うのとともに、街の資源を活用し、新たな産業を創る取り組みを行っている。

空間を軸に社会課題を解決する-3

「自分の人生」より長いものをどうデザインするか

―お二人のように建築出身の方々って社会課題に対する想像力が高い印象があります。

中村

対象を見る幅かもしれないですね。個人の時間軸とか、人生という期間を超えるような建築物って多くあるわけです。建築が好きになっていく人が建築学科に入り建築を学んでいく。そうなると、自分の人生の時間軸よりも長いものに自然に向き合っていく。もちろん、さらに「都市」まで範囲を拡げていくと、物理的にもヒューマン・スケールで認知できる範囲よりもっと大きいわけですよね。

岡部

それはありますよね。横浜市立大でコミュニティビジネス論を教えているんですが、そこでも時間軸について話をしています。人間の尺度は長くても100年くらい。それに対して、街は最低100年や200年、さらに、1000年という違う尺度で物事が展開されている。

街づくりでよくやるイベントって「街の時間軸」から見たらコンマ1秒かもしかない。10年という時間も街の時間軸から人間の時間軸に換算すると1日でしかないかもしれない。そう考えると、活動や事業のサスナビリティをデザインするということを自然と意識するようになりました。

例えば、サグラダファミリアは教会に集まる寄付を財源として、設計者が亡くなった今も造り続けられている。20年に1度当時の建築技法を用いて作られる伊勢神宮の式年遷宮なども、儀式、技術の継承や、想いを後世に伝えるなど、非人間的な時間軸を意識した行為のデザインですよね。社会課題の解決というのもひょっとしたら、それと繋がるところがあるのかもしれません。

変貌する都市と企業の関係性の中での葛藤

中村

カナダのトロントでGoogleがグループ全体の総力をあげて都市開発に取り組んでいる。ITを活用して、都市そのもののあり方を変えようとしている。もちろん、googleのようなグローバル企業だけではなく、小さな企業も市民も含めて考えていかないといけない。僕らに何が可能か、すごく悩むんですよ。

宮下公園の話もそうですけど、DeNAがスタジアムにかかわったことで横浜が変わりはじめているわけですよね。たしかに、スポーツの要素が街に埋め込まれた。それも一つのコンテンツであり、街の生態系の変容だと思う。とはいえ、一つの要素だけだと多様性は生まれない。これから10年や20年の中で何かが生まれてくる時期だなって感じているんですよね。どう思います?

Google 親会社アルファベット傘下のSidewalk Labsが未来の都市づくり

https://wired.jp/2017/11/26/google-sidewalk-labs-toronto/

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Tetsuo Kato

アジア及び日本におけるベンチャー企業および非営利組織の事業開発に携わり、計27社の事業開発及び変革を支援。2011年、東日本大震災を契機にWorld In Asiaを立ち上げ、以降、東北、日本、アジアでの「社会的投資」を手がけてきた。AERA「アジアで勝つ日本人100人」に選定。著書に「辺境から世界を変える」(ダイヤモンド社 2011年)

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