“社会起業家”の対談から、支援のあり方を再考する
初回の対談をJEN木山啓子とsoar工藤瑞穂にお願いしたのは、揺れ動くスピードが速まる世界で、我々が何から備え始めるべきか?ということを考えたかったからだ。
「人を助ける」ということは本当に難しい。JEN木山が言うように、「助けたつもりが、力を奪っている」ことも少なくない。それは、もちろん、支援を職業とする我々にも起きている出来事だ。そして、「何かしてあげないと」が、結果的に力を奪っているかもしれないとJEN木山は指摘する。それに対して、soar工藤は、「当事者は同じ立場の人たちの情報を知りたいと思っている」というニーズからみつめていこうとする。そして、対話は「多様な在り方をどう受け入れ、可能にしていくか」という問いに移りはじめる。
JEN木山は“「彼が間違っていて、わたしが正しい」っていうのも間違い”という、代表者としての線引きを共有する。多様性を受け入れる中で、どのような規範を自らが持ち、何を組織の水準としていくのか。人を助けるには、まず、スタッフのケアからという話の流れは必然かもしれません。対人支援を代表者一人で行うことはできないから。NPO法人を立ち上げて1年のsoar工藤は今、その問題と格闘しています。
JENのように緊急支援を得意とするNGOでは、様々な工夫が既に実践されています。「8週間に1週間は強制的に休ませる」というのも代表的な工夫の一つです。そして話は、「誰にも頼まれていないのに、何か役に立ちたいと思えるところまで進めるか」という言葉で締めくくられていきます。支援に目標があるとすれば、当事者が「誰かの力」になる、ということかもしれません。
実は、この対話はエンパワーメントの概念を照らし出す対話でもありました。エンパワーメントの側面は、大きく分けると二つあります。一つは、当事者の能力獲得のプロセスであり、もう一つはその基盤となる状況認知のプロセスです。対話の多くは、前者のアプローチでしたが、後編で語られたsoar工藤の「ネガティブな感情の連鎖を最小限に抑え、ポジティブな感情の連鎖を最大化させる」という工夫は後者の視点でとてもユニークなものです。soar工藤はインターネットやメディアというツールを使いながら、小さな勇気や小さな受容を育んでいこうとしています。案外のところ、災厄の中で苦しむ当事者にとって、自らの可能性に気づくというの難しいことであったりするのです。