拒絶、沈黙、承認を経て―本当の支援者と出会い、共に歩むには?

 

GOONJ代表アンシュ・グプタ(前編)

今やインドでもっとも影響力のあるNGOとして名が挙がるGOONJ。けれども、GOONJですらインド全土に広まるまでには約10年もの歳月を要したと言います。発案から本当の支援者の獲得に至るまで、その道のりはどのようなものだったのでしょうか。新しい取り組みを展開していくには、拒絶、沈黙、承認の3段階を経る必要があるとアンシュは語ります。

アンシュ・グプタ-5

アンシュ・グプタとの対話。デリーのGOONJ本部を訪れた際に

愛があるからこその拒絶

一番目の拒絶のステージは、自分の考えが周囲に理解されず、「そんなこと、やめておいた方がいい」と拒絶されてしまうステージです。

こういった批判は、特に家族や兄弟姉妹といった身近な人から来るのが通例です。なぜかというと、周りにいる身近な方というのはあなたのことを愛しているからです。だから、仕事をだめにしてしまうのではないか、人生がだめになってしまうのではないかという心配をするのです。周りの方というのはあなたのことを愛しているからこそ、心配して拒絶するのです。

アンシュ・グプタ

GOONJ代表。ジャーナリストとしての背景を持ち、1998年にGOONJを創業。2004年には世界最大の社会起業家ネットワークであるアショカ財団から、大陸規模の変革をもたらす社会起業家として選定されるなど、国内外から高い評価を得ている。

批判は原動力になりうる

しかし、批判されることは悪いことではありません。社会起業家というのは必ず誰かから批判される。これは非常に大事なことです。社会を変えるためには必ず批判される必要があり、これが大きな原動力になります。

例えば、私たちも社会起業家を支援する団体から「あなたのやり方は、今の私たちの条件や特性には合いません」ということをいつも言われていました。

ただ、このように批判されたことは私には大きな原動力になりました。自分たち自身の大きな夢を描いて、あきらめずに活動を続けたことで、次第に条件に合うことが増えてきたと感じるようになりました。

言い方を変えると、われわれの活動自体が、支援団体が持っている条件や特性すら変えてしまったのです。もし今のGOONJが支援のお願いをしたとして、「うちの条件には合いません」という答えはもう返ってこないと思います。

できるかどうか分からないとしても、自分が一生懸命に取り組み、そして人々に問題を理解してもらえると、その問題は皆に共有される社会問題となるわけです。

私たちは取り組んでいる問題を深刻に捉え、深く考えて、決してお金では解決できないことをなんとかやろうとしている。その結果として「社会起業家」と呼ばれているということを理解しておいていただきたいと思います。

GOONJ(グーンジ)

インド農村部で経済格差の解消に取り組むNGO。インフラ整備といった労働への対価として、寄付で集めた古着を配布するなど、貧困層の尊厳を守りながらも、コミュニティを発展させる支援システムを生み出すことに成功した。
現在では同様の取り組みがインド全土12の拠点で展開される。寄付される古着は年間3千トンにのぼる。

沈黙という準備段階―批判されても自分を信じること

二番目のステージは「沈黙」です。自分の考えを自分独自のものと考え、準備作業を始めていきます。この段階では自分以外は同じ考え方を持っていないかも知れません。

例えば、衣類の問題を扱っている私の場合では「いや食糧問題の方がもっと大事じゃないか」「水の問題の方がもっと大事だ」という意見が出てくる。

ただ、私は食糧や水の問題が無視されていいと思っているわけではありません。さまざまな問題、さまざまなニーズが世界中に存在している。私はそれでいいと思っています。私が取り組んでいる問題は私自身が本当に必要でやりたいと思っていることであって、それを変える必要はありません。沈黙の中で自分を信じる。そういう段階です。

ライフワークとして何かに取り組む際に、「自分がやりたくないのはなんなのか」という風に考えていく方法があります。それは、自分の生活、人生の中でこれは不要だというものを、例えばパソコンで次々デリートボタンを押して消していくような作業になります。そして、最後の最後に残っているのは何なのかと。それがまさに自分がフォーカスする部分です。

真摯に訴え続けることが周囲の承認を生む

三番目の「承認」のステージは、自分が周囲に認めてもらえるステージになります。魂を込めてやっていることに盲目的に取り組み、周囲に真摯に話しをしていく。それを続けることで、承認のステージに入っていくことが出来ると思っています。

アンシュ・グプタ-6

農村の当事者たちとプロジェクトを議論するアンシュ・グプタ

その際、自分がやろうとしていることや周囲へのアプローチがうまくいかず失敗するかもしれません。失敗したら変えるべきものは変えて、もう一度やってみてください。

そうすると、そこには、脇目も降らずに挑戦し続ける姿勢が表れます。これは自分のやりたいことで、必ず成し遂げるんだと証明するための大事な過程です。あなたがやろうとしていることは、あなたにしか出来ないことなのです。

答えの見えない中で、小さなアクションを続けること

―世界中には実に多様な問題が存在していますが、世界を変えるために我々は何に取り組むべきでしょうか。

世界を変えたい、貧困をなくしたいと語ることもありますが、私自身、どうやったら世界から貧困をなくせるか、答えはわかりません。

まず私たちは、現実を直視することを疎かにしてきたことを、恥ずかしく思わなければいけません。例えば、日本のような国で、震災のときに何万人もが亡くなったということや、毎年3万人もが自殺をしているということを、きちんと理解しているでしょうか。

そして、日本を越えて見てみても、同じような人が何百万人もいるということをきちんと理解しているでしょうか。今世界中で起きている問題を、自分自身も関わる問題として捉えられているでしょうか。国は違っていても、私たちはこの一つの地球に生まれて共存している仲間です。私たちは世界を一緒に変えていく必要があります。

世界を変えたいのであれば、アクションを起こす主体を出来るだけたくさん増やし、実際にアクションを起こし続けることが必要です。

世界には色々な問題があって、それを一気に解決するのは困難です。ではどうするか。さまざまな問題を小さく分割していく作業が必要になります。そしてそれぞれが自分の課題に取り組むことが大事です。それぞれが小さな問題を一つずつ確実に解決していくことで、一緒によりより世界に変えていくことができます。

「別の問題の方が大事だ」と言う人がいますが、あなたはあなたのすることをやって、私は私のやることをやればよいのです。失敗や経験から学び、常に自分が取り組むべき課題に挑戦を続けることで、世界は一緒に変えていけると信じています。

本記事は、2013年にアショカ・ジャパンの主催、招聘で行われたGOONJ代表アンシュ・グプタの講演・ワークショップを一部加筆し、記事化したものです。一部の詳細情報は、INK Talks ”The invisible disaster”を参考にしています。

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Kyoko Fukuda

Kyoko Fukuda

東京都杉並区出身。2018年より翻訳家・ライターとして活動を始める。まちづくりから動物愛護までボランティア活動に携わり、よりよい社会とは何かを考えてきた。2017年ベルリンに移住。これまで大分県、インドネシア・バンドン、英国・ロンドン、ドイツ・ベルリンで暮らしてきた。

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